日本国内のアート投資への投資額が低い理由・その解決策とは?

アート投資 (1)
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日本はアート投資が手軽に始められる環境が整っているにも関わらず、国際的に見てもアート投資への投資額が低い国とされています。

では、具体的に日本国内のアート投資への投資額が低い理由とその解決策とはどのようなものなのでしょうか?
今回はその問題点と解決策について解説していきます。

この記事を読んで分かること

  • 日本におけるアート投資の現状は参入障壁があり、投資機会にも間口の小ささが際立っている
  • 投資額が低い理由は、税制優遇措置がない点と芸術への理解が進んでいない点が大きい
  • アート投資をより活性化する方法は、4つ!
    換金性を上げる②保存を容易にする③教育の場を作る④新規参入しやすい仕組み作り
  • 現段階でおすすめのアート投資の購入・取引方法はギャラリストと百貨店外商部の活用
  • 日本国内のアート投資は今が再創生期!
この記事の作成者

坂本智美

京都造形芸術大学(現京都芸術大学)を卒業後、任天堂株式会社の商品品質管理部を経て、和器商会株式会社のオークションマネージャーを歴任。
現在は美術修復スタジオを京都にて運営し、リセールバリューの底上げに日々奔走している。また、美術に関するコンサル業務も請け負う。

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目次

日本国内のアート投資の現状

日本国内のアート投資の現状を説明していきます。

バブル崩壊、リーマンショック、そしてコロナ禍と時代が移りゆく中で、現状はどうなっているのでしょう?

冒頭で触れたように国際的に見てもアート投資への投資額が低い国と位置づけされています。

毎年恒例であるアートバーセルのHP内で2021のアートマーケットリポートが公表されましたが、『Global Art Market Share by Value in 2021(美術市場の国際シェア2021年レポート)』の項目にも日本は円グラフの中にさえエントリーしていない状況でした。

アート円グラフ
The Art Market 2021 An art basel and UBS reportより

なお、日本国内での美術マーケットの動向に関して詳しく2020年度版詳細が『Art Market Report』にてまとめられています。
※文化庁委託事業「令和2年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」出所)「日本のアート産業に関する市場調査2020」(一社)アート東京、(一社)芸術と創造
※『Art Market Report』は『日本在住の日本人』や『国内事業者』など言葉に言い換えがあるのでおおよその参考にご覧ください

アート投資
日本のアート産業に関する市場調査 (artmarket.report)

この『Art Market』内の数値は合計で2363億円の全てがアート投資に活用されているわけではありませんが、母数を把握するには優秀な資料と言えます。

国内での美術品を扱う窓口として百貨店とギャラリーが主体であることが分かり、動かす金額が大きい分、様々な情報も集まりやすいと考えられます。

プロのアート投資家の方はギャラリーと直接取引をする場合もあれば、ギャラリスト同伴やお一人で美術オークションに足を運ぶ場合もありますが、最初にアート投資のイベントや取引の主な機会を相談するには百貨店とギャラリーが無難だと思います。

アートグラフ
チャネル別市場規模
日本のアート産業に関する市場調査 (artmarket.report)

美術マーケットは貿易業務としての側面があることもよくわかるグラフです。

国内外で連携し、業務の多様化が進んでいると言えるでしょう。

コロナ以前のインバウンド需要があった時は、中国本土から美術オークションツアーが組まれて日本国内のオークションに団体で参加して入札して回る事も数年通例となっていました。

今後ともアート投資には国際的な広い視野が必要になりそうです。

知っトクコラム

画廊・ギャラリーは真の実力者

街を歩いていると見かける小さな画廊やギャラリーは一見するとオーナーが細々と続けているようなイメージですが、それぞれにグループや会を持っており、独自のコネクションがあります。
近年は画廊やギャラリーを持たずに倉庫のみで運営するディーラーも多いのですが、その方々との橋渡しを兼ねる場合もあります。
審美眼を持ち、交渉術に長けた真の実力者です。

世界のアート投資の現状

日本の現状を把握したところで、世界のアート投資の現状を解説していきます。

こちらも2021年版アートバーセルリポートから詳しく見ていきましょう。

おさらい
【2020年集計】世界のアートマーケットシェアTOP5
①アメリカ
②中国
③イギリス
④フランス
⑤スイス

2020年はコロナ禍の影響から国際的なアートフェアが中止となり、2019年前年と比較すると22%減となりました。

しかしながら、資金力の潤沢な国は盤石でコロナ禍においても大きな順位の入れ替えはありませんでした。

アート投資チャート
The Art Market 2021 An art basel and UBS reportより

上記の表は2008年のリーマンショックからの国際的な美術マーケットの推移を見ることができるのですが、特質すべき点としてはリーマンショック後のリベンジ消費です。

過去の推移からコロナ禍の終息と共に持ち直す期待が業界に高まっていると言えます。

その上で、2008年リーマンショック下での売り上げが36%減と比較して2020年コロナ禍の売り上げが22%減で歯止めが掛かった背景には中国の追い上げがありました。

アート円グラフ
The Art Market 2021 An art basel and UBS reportより

オンラインライブオークションへの迅速な切り替え対応が功を奏し、中国は2020年後半に勢いがつきオークション市場にてハイエンドでの好調な売り上げを記録しました。

IT技術を活かした事業構築に今後も注目が集まります。

知っトクコラム

中国のアート投資事情

アート投資に関心を寄せる若年層投資家が多いイメージです。
wechatで美術オークションに関するマガジンを出した場合の購読層はなんと10-30代がメインでした。
シンガポールや香港、中国本土で不動産投資するのと同じ扱い方で美術品に投資意欲があります。

日本国内のアート投資への投資額が低い理由

日本・ヨーロッパ圏・アジア圏とそれぞれのアート投資の現状を踏まえて、日本国内のアート投資への投資額が低い理由を解説していきます。

参入障壁がある

実際にアートオークションに参加しようとした場合、どうしても参入障壁があります。

【令和版】オークションって実際問題…

  • コレクターが売買出来るオークションプラットフォームを選定できない…
  • ヤフオク、メルカリのような玉石混合ではなく、売り手も買い手も信用出来る場へ参入したいが敷居が高い…

参入障壁を下げる・換金性を上げる事が重要です。

日本ではアート投資同様にワインに対する投資金額も少ない印象ですが、ロレックス投資が盛んなのは参入しやすさ・換金性の分かりやすさだと思われます

投資機会の間口の小ささ

バブル期と比較して:
団塊世代と呼ばれる当時は、海外渡航の際に乗ったクルーズ船でオークションイベントがあったり、地方都市でも地主や中小企業の経営者に向けてチャリティーオークションと称したイベントで6-9号ほどのちょっとした西洋画を家に持ち帰る…なんて事がありましたが、現在の日本ではそのような投資の機会は少なくなりました。

現在、アート投資をしている大半の方々は年配でノウハウがあり、古物商許可証などを取得している場合もあります。

コミュニティが出来上がっている面もあるので、間口が広いとは言い難いでしょう。

税制優遇措置がない

寄付のように美術品購入時に税金が免除される優遇措置が日本にはありません。

また、美術品には相続税が掛かるので扱いが厄介と考える意見もあります。

知っトクコラム

古物商許可証ってアート投資に必要なの?

メルカリやヤフオクの注意事項や利用規約で『古物商許可証』の文字をご覧になった方もいらっしゃるかも知れません。
結論から申し上げると、日本国内でアートオークションに参加する場合に取得していると非常に便利です
税制優遇措置はありませんが、法人をお持ちの場合、法人名で取得していると活躍シーンがあるかも知れません。

芸術への理解が足りない

日本では美術館や博物館の企画展示への来館やそれに付随したイベントへの参加は比較的活発ですが、一方で『芸術は分からない』『芸術は道楽(金銭的価値はない)だ』と言ったレッテルが未だに根強くあります。

【ケーススタディ】ビジネス・リテラシー-アーティストコラボ編-
例)
アーティストのSNSがバズっているのでその話題性が及べばとコラボ発注
⇒コラボ案件が終わるとアーティストとのコラボ商品を模倣した商品を数種類発売し、そちらを定番化する。。。

ノウハウを搾取する為のツールとしてアーティストとのコラボを利用する企業もあるようです。
こう言った背景にはビジネスにおいてアーティストをフォローアップする体制が十分整っていない事と、アーティスト軽視に関しての問題が叫ばれます。

なお、自分の好みのアーティストを見つける手段が足しげくギャラリーに通うか、もしくは、インスタで探す以外に道筋がなく、具体的にアーティストを応援する場合は作品を購入する以外の方法がないことも投資額が低い理由に挙げられます。

日本国内のアート投資をより活性化する方法

次に日本国内のアート投資をより活性化する方法を考えていきましょう。
どのような活性化案があるのでしょうか?

換金性を上げる

優れた美術資産の換金性を上げるイベントや盛り上げる企画が必要だと思います。

既に高騰しているアーティストやジャンルに参入するのも良いですが、ディーラー側が業界活性化の為に商材を掘り起こし、換金性が国際的に上がっていく提案の場が広がれば、回収時のロスも少なくなるでしょう。

現状、美術オークション会社でも換金性を上げる為に事前の入札ヒアリングであったり、現地会場からオンラインライブにて下見(エキシビション)中継をしたりと様々な取り組みが行われています。

国内のアートフェアや各種イベントでも換金性向上の為の取り組みが発展すれば流動性に富んだ取引へと国内市場も成長するはずです。

保存を容易にする

100号の油画やブロンズ像を購入した場合、どうしても保存にコンテナが必要になります。

実は中国本土のアート投資家の中には日本国内の倉庫で自身の美術品を保管している方もいらっしゃるのですが、美術収蔵専用の倉庫などメンテナンス管理を主軸とする事業が発展しても良いと思います。

単純に家賃回収するだけでなく、預かりでの資産管理運用を兼ねた事業性があれば、プライベートセールをして商材を動かすことも可能です。

プライベートセールも依頼できる保存委託先があれば経年劣化によるリセールバリューの価値を落としてしまう事もないですし、安心です。
これには手腕のあるディーラーが必要ですが、保存管理を容易にする仕組み化としては良案ではないでしょうか?

教育の場を作ること

2022年4月から高校家庭科で『投資信託』が授業内容に登場していますが、やはり学びの場で実物資産のジャンル『美術』を示していく事が重要と考えます。

アート投資には生み・育て・次世代に繋げられる文化的資産価値があります。

実は日本は明治時代に一度国策としてアートを貿易商材として生み・育てた時期があるのですが、投資の側面から今一度、アートと向き合う機会をつくり、選択肢の一つとして活用いただけるような地道な取り組みが必要かと思います。

新規参入しやすい仕組み作り

先に述べているアートオークションへの新規参入やアーティストへの支援など、コミュニティに広がりがあるやさしい仕組み作りが活性化の更なる一手であると思います。

クラウドファンディングなどで個々に動きもありますが、美術見本市などの各種イベントをAPP化させる事により参入障壁が下がる事を期待します。

オンラインライブオークションを進めている国内アートオークションも登場しつつあり、今後の運営にますます注目して行きたいです。

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現段階でおすすめのアート投資の購入・取引方法

では実際に現段階でのおすすめのアート投資の購入・取引方法をご紹介いたします。

実物資産は信頼できる・安心できる取引が一番なので、参考にしてみてください。

・信頼できる優秀なギャラリストを見つける

・百貨店外商部を活用する

仕入れのルール・エビデンスを確立しているプロをパートナーにするのは心強くもあり、投資の成功率が格段に上がると考えられます。

海外の見本市(アートバーセル)やギャラリーとのやりとりを積極的に熟している日本在住のギャラリストも大勢います。
百貨店の外商部も美術販売において独自の進化を遂げたプロの窓口です。

扱っているジャンルや強みを把握した上で選定すると好ましいと思います。

日本国内のアート投資の現状のまとめ

今回は、日本国内のアート投資への投資額が低い理由とその解決策に関して解説してきました。

アートバーゼルイン香港 (artbasel.com)
アートバーゼルイン香港 (artbasel.com)

日本国内のアート投資は今が再創生期です!

アートの希少性に対して、バブル期とはまた違った視点での関心が集まっています。

この記事のまとめ

日本国内のアート投資への投資額が低い理由とその解決策とは?

投資額が低い理由
〇参入障壁がある
〇投資機会の間口が小さい
〇税制優遇措置がない(美術品に相続税が掛かる)
芸術への理解不足
〇アーティストを応援する場合は作品を購入する以外の方法がないことも投資額が低い理由

【解決策】
〇参入障壁を下げる・換金性を上げる事が重要
保存を容易にする
〇アート投資を学ぶ教育の場を作る
〇新規参入しやすい仕組み作りを進める

実物資産は信頼できる・安心できる取引が一番
まずはギャラリストや百貨店外商部を積極活用して要相談・情報収集

日本ではアート投資が手軽に始められる環境が整っています。

日本がアート投資に恵まれた環境にある事は確かなので、競合の少ない今が考え方によっては参入の良いタイミングでもあります。

ぜひ、この機会にライフプランにあった距離感で計画を立ててみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

京都造形芸術大学(現京都芸術大学)を卒業後、任天堂株式会社の商品品質管理部を経て、和器商会株式会社のオークションマネージャーを歴任。

現在は美術修復スタジオを京都にて運営し、リセールバリューの底上げに日々奔走。美術に関するコンサル業務も請け負う。

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