インデックスファンドとは?仕組みや種類、メリット・デメリットを専門家が解説
インデックスファンドは、1970年代半ばに米国で誕生しましが、その背景にはアクティブファンドの不振がありました。
当時の米国における調査では、アクティブ運用(指数=インデックスを上回るリターンを目指す運用)の約85%がベンチマークとする指数であるS&P500を下回るリターンであったと言われています。
この状況を背景に、低コストで市場全体のパフォーマンスに連動するインデックスファンドの導入機運が徐々に高まったのです。
現在に至るまで、インデックスファンドは様々な変化を遂げながら、多くの投資家からの支持を拡大してきましたが、当コラムではそのエッセンスをご紹介したいと思います。
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インデックスファンドとは
インデックスファンドとは、日経平均株価やS&P500指数など、市場全体のパフォーマンスを表すために設定された指数(インデックス)と同じ動きをするように設定されたファンドです。
米国で株価指数に連動するファンドから始まりましたが、現在では、債券、商品、リートなど、様々な資産クラスに渡って設定されています。
指数に連動するポートフォリオを構築してインデックスファンドを設定しますが、主に3つの方法が実践されています。
完全法 | 指数に採用されている全銘柄を同比率で保有する方法。インデックスとの連動性が高く、理想的な方法とされる。 |
層化抽出法 | 採用銘柄を価格変動に影響を及ぼす要因別にいくつかのグループに分け、そのグループの中から最適な銘柄を選定する方法。全銘柄を購入することなく、指数に近い値動きを実現する。 |
最適化法 | 計量モデルによって、特定したいくつかの条件下で指数と連動するように銘柄の比率を目指す方法で、全銘柄を組み入れることなく、効率的に指数に連動するポートフォリオを構築する。 |
インデックスファンドの特徴とメリット
それではまず、インデックスファンドの特徴と投資をするメリットについて説明します。
アクティブファンドとの違い
インデックスファンド(パッシブファンド)の対局にあるのがアクティブファンドです。
アクティブファンドは、アナリストやファンドマネージャーが企業調査などを徹底的に行い、積極的にリターンを追求する運用で、市場全体(指数=インデックス)のパフォーマンスを上回ることを目指すファンドです。
一方で、市場全体のパフォーマンスに連動した収益を目指すのがパッシブファンドであり、インデックスファンドのほとんどは、このパッシブ運用に分類されます。
アクティブファンドは、いかに市場全体のパフォーマンスを上回るかで評価されますが、インデックスファンドは、どのくらい正確に市場に連動するかが評価対象となります。
インデックスファンド(パッシブファンド)とベンチマークのパフォーマンスの差をトラッキング・エラーと言いますが、この数字が低いほどインデックスファンドの評価は高くなります。
インデックスファンドとETFの違い
1975年にアメリカの資産運用会社であるバンガードが、S&P500をベンチマークとするインデックスファンドを初めて設定しました。
それ以来、多くのインデックスファンドは、自由に換金することができる追加型投資信託という形態をとり、主に個人投資家の運用ツールとして発展しました。
詳しくは後程説明しますが、 投資信託は市場が取引を終えた後に算出される基準価額で購入・解約の手続きをしますので、投資家は日中に購入・解約ができません。
従って、市場が急騰・急落する時に、すぐに投資の判断をしたくても市場が引けるまで待たなければいけないという不便さがあります。
この投資信託によるインデックスファンド投資のデメリットを改善するために開発されたのがETFです。
ETFは株式と同じように取引所で売買できますので、投資家は、市場が開いている間は自由に投資判断をすることができます。
コストが安い
アクティブファンドは、多くのアナリストを揃えて企業調査を行い、優秀なファンドマネージャーを採用して運用を担当させますので、コストが高くなる傾向にあります。
一方で、インデックスファンドは、企業調査の必要はありませんし、ヘッジファンドのように高い報酬を払わなければならないファンドマネージャーを雇う必要もなく、追加的コストがほぼかかりませんのでコストが安く済みます。
結果的に、投資家が負担する運用報酬等のコストは、アクティブファンドに比べて低くなるのです。
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分散投資が可能
指数(=インデックス)は市場全体を表すものですから、数多くの銘柄が指数に採用されます。
例えば、日経平均株価なら225銘柄、東証株価指数(TOPIX)なら東証1部上場のすべての銘柄が対象になりますので2000銘柄以上になります。
従って、インデックスファンドを購入すると、同時に多くの銘柄を保有することになり、ポートフォリオは自動的に分散されることになります。
インデックスに採用されている銘柄のすべてを直接買うには多額の資金が必要ですが、インデックスファンドを購入することにより、少額な資金で分散投資が可能となります。
インデックスファンドの利用法
次に、インデックスファンドの特徴を生かした利用法を説明します。
長期投資に有利
アクティブファンドはコストが高めだと説明しましたが、長期投資をする際に、このコストはパフォーマンスを左右する重要な要素になります。
ファンドに支払う信託報酬料は投資期間中、毎日日割りした分がファンドから引き落とされていきますので、投資期間が長いほど、高い運用報酬料がパフォーマンスに及ぼす影響が大きくなるので注意が必要です。
一方で、インデックスファンドはコストが安いので、長期投資には有利になります。
2018年に始まった「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」では、金融庁が決めた基準を満たす投資信託のみが採用されており、その多くはインデックスファンドです。
金融庁がこの制度で目指したのは、国民に長期投資を促すことであり、このことからもインデックスファンドが長期投資に向いた商品であることがわかります。
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グローバル分散投資が可能
直接投資によりグローバルに分散投資をしようとすると多額の資金を必要としますので、以前は機関投資家のみに許された投資戦略でした。
しかし今日では、少額の資金でも投資可能なインデックスファンドを利用することにより、個人投資家でもグローバル分散投資ができるようになりました。
世界各国のあらゆる資産クラスが、インデックスファンドとして設定されていますので、本邦富裕層投資家は世界中の株式や債券等に分散投資し、安定したリスク・リターンを実現するポートフォリオを保有することが可能です。
時間分散による効果
インデックスファンド投資において、長期投資、分散投資と並んで重要な要素が時間分散という概念です。
市場の上下を的確に予想するのは極めて困難ですので、長い時間軸で投資タイミングを分散させて、平均購入価額を引き下げることは重要です。
株式などに直接投資するとなると、1銘柄ごとにタイミングを分散して購入するのはとても大変ですが、インデックスファンドを利用すれば容易です。
「長期投資でも負担の少ない低コスト構造」、「自動的に銘柄を分散」、「タイミングを分散して購入価額を引き下げる」、この3点を効率よく実現できるのが、インデックスファンド投資なのです。
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また、投資信託以外にも様々な商品がそろっているので、充実した資産運用をすることができます。
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インデックスファンドの問題点
ここまで、インデックスファンドの特徴や利用するメリットを説明しましたが、インデックスファンドの利用が広まるにつれて、いくかの問題点も指摘されています。
市場は常に上昇するという幻想
低コストのインデックスファンドで長期に投資すれば、分散効果もあり安定したリターンを得ることができるということですが、これは市場が常に右肩上がりであるということを前提としています。
アメリカにおいては、自国の株式市場がいくつかの暴落を経ながらも、長く続く長期上昇相場にあり、低コストのインデックスファンドを長期に保有することの効用を主張する市場参加者が多いようです。
特に、リーマンショック以降の右肩上がりの相場では、低コストのインデックスファンドへの投資で指数に含まれる銘柄に分散投資することが効率的でありましたが、この状況が未来永劫続くという保証はありません。
一方で日本の株式市場を振り返って見ると、バブル崩壊後に株式市場が長く低迷していた時期において、日本株インデックスファンドを長期保有する投資家が報われることはありませんでした。
市場環境によっては、インデックスファンドの長期投資が機能しないことがあるということを理解しておくべきでしょう。
経営内容が悪い企業の株も購入
インデックスファンドは市場全体に投資する、すなわち、基本的にはインデックスに含まれる銘柄をすべて買うことになりますので、業績の悪い企業の株式や割高の銘柄も買わざるを得ません。
また、不祥事を起こした企業、あるいは昨今市場の一大テーマとなっているESG投資の観点から考えると、環境保護や社会貢献に積極的でない企業の株式なども買わざるを得ません。
このように経済的な問題のみならず、道義的な問題も含めて、どんな銘柄も買ってしまうインデックスファンドの構造的問題を指摘する投資家が増えているようです。
市場の価格発見機能の低下
株価は、多くの投資家がその株式の価値を分析し、市場で売買することにより適正水準が決まります。
インデックスファンド(パッシブファンド)は、問題のある企業の株式でもインデックスに採用されていれば基本的に購入し保有を続けますので、企業の問題点が株価に織り込まれにくくなり、適正な株価が見つかりにくくなる可能性があります。
投資家があまりにインデックスファンド=パッシブ運用に傾斜すると、市場の価格発見機能が低下してしまう恐れがあるのです。
インデックスファンドの新潮流
インデックスファンドは、長い年月をかけて変貌を遂げてきましたが、その象徴的存在がETFとスマートベータという新たな投資ツールです。
ETFの興隆
1970年代の誕生からこれまでのインデックスファンドの歴史では、追加型投資信託が主流でしたが、1990年代に入り登場し脚光を浴びたのがETF(Exchange Traded Fund/上場投資信託)です。
上場株式のように証券取引所に上場され売買することができる投資信託で、大半のETFは特定の指数(インデックス)に連動するように設計されています。
ETF活用のメリットは、株式同様に市場が開いている間は、ETFの価格が常に提示されているので、投資家はリアルタイムで売買(投資)できるという点です。
投資信託は、市場がクローズした後に産出される基準価額で売買されますので、投資家が投資を決定した時点では、いくらで売買することになるかを正確に知ることはできません。
故に、市場が急騰・暴落するような局面で機動的に売買できるETFの人気が高まっているのです。
また、投資信託と比べて、一般的に購入手数料や信託報酬料などのコストが安くなることもETF人気の理由です。
一方で、ETFのデメリットとしては、投資信託で可能な自動積立投資が必ずしもできないこと、分配金が自動で再投資されないことなどが挙げられます。
スマートベータの登場
インデックスは、構成銘柄とそのウェイトを決めれば作れますが、これまでの構成銘柄の選び方は、時価総額ベースが主流でした。
時価総額ベースで構成銘柄とウェイトが決まる問題点は、株価が高く時価総額が大きくなった(割高な)銘柄により多く資金が配分される一方で、時価総額が小さく過小評価された(割安な)銘柄への投資が少額になるという構造的な問題があります。
そこで、時価総額ではなく財務指標(配当や利益など)など他の要素でウェイトを決める新たな指標(インデックス)を作る動きが活発になりました。
言い換えれば、これまでプロのファンドマネージャーが行っていた投資戦略をインデックス化して投資を行うということです。
これがスマートベータ(賢い指数)と呼ばれるものです。
そしてこの新たなインデックスに投資することにより、TOPIXなど既存のインデックスを上回るリターンを狙ったり、リスクの低減を目指すのです。
スマートベータには、バリューやグロース、高配当株、低ボラティリティ株、モメンタム株などで構成するインデックスがあります。
スマートベータを利用した商品はSBI証券でも購入可能です。
インデックスファンドのまとめ
インデックスファンドは誕生から40年近くを経て、大きな進歩を遂げてきました。
これまでプロのファンドマネージャーのみ可能であった分散投資やグローバル投資を、いつでも機動的に投資の意思決定ができるETFを用い、
さらに既存の時価総額ベースのインデックスを上回る投資戦略(スマートベータ)を使って、低コストで実現できるようになりました。
この恩恵を最も大きく受けることができる富裕層投資家は、インデックスファンドを上手に活用することにより、これまで以上に魅力的なポートフォリオを持つことができるのです。
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