ここから本文です。

フィスコ統合報告書レポート

Vol.11

GPIFのESG投資への取り組み

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、ニッセイアセットマネジメント(株)に委託した『ESGに関する情報開示についての調査研究』が開示されていますのでご紹介します。

出展:GPIF https://www.gpif.go.jp/investment/research_2019_full.pdf

まず、本調査研究の背景として、GPIFにとって地球環境問題や社会問題等の負の外部性の最小化を通じて、ポートフォリオの長期的リターンの向上と、金融市場全体の持続可能性の向上を図ることの重要性が高まっているとし、ESG指数の選定、国内外の株式における環境指数の選定など様々な取組みを進めており、こうした諸活動を 支える土台として企業によるESG情報開示が重要であると位置付けています。

現在、世界の主要なESG情報開示基準等には、グローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)が開発した「GRIスタンダード」、SASB(サステナビリティ会計基準審議会)が開発した「SASBスタンダード」、国際統合報告評議会(IIRC)が開発した「国際統合報告フレームワーク」、金融安定理事会(FSB)の要請を受けて気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が策定した提言書などがあります。一方国内では、経済産業省による「価値共創のための統合的開示・対話ガイダンス -ESG・非財務情報開示と無形資産投資の促進-(価値共創ガイダンス)」や、環境省による「環境報告ガイドライン」などが知られていますが、こういった国内外において相次いで策定される、ESG情報開示に関する様々なススタンダード(基準)、フレームワーク、ガイドライン等が、企業のESG情報開示 の現場では混乱が生じていると指摘しています。加えて、ESG情報を開示すべきであることは理解しつつも「具体的にどういったESG情報を開示すべきなのか分からない」、ESG情報開示基準等について 「どれから優先的に取り組めばよいのかわからない」といった疑問が存在しているとしています。

一方、上記8つのESG情報開示基準等の位置付けの違いを次のように述べています。

  1. 世界的にプレゼンスの高い「国際統合報告フレームワーク」「GRIスタンダード」「SASBスタンダード」は酷似しているというよりも、むしろそれぞれが対極に位置している。
  2. 「国際統合報告フレームワーク」と「SASBスタンダード」は、ともに経営成績や財政状態への影響に関連する情報の開示を狙いとしているが、原則主義を貫く前者は具体的な開示項目・指標の設定は一切なく、企業による創意工夫を凝らした実質的な情報開示を求めている。その理念を踏まえてしっかりと作り込まれた統合報告書は読み応えがあり、個々の企業について理解を深めるのに役立つであろう。他方細則主義を貫く「SASBスタンダード」は、77の産業別に開示すべき項目・指標を具体的に設定している。標準化された情報開示が期待されることから、情報利用者にとっては、定量化(スコアリング)や同業他社間の比較可能性に優れた情報開示を促す開示基準であると言える。
  3. 「GRIスタンダード」も細則主義的なアプローチを採用しているが、開示を求めている情報が必ずしも企業の経営成績や財務状態に関するものではなく、企業が経済・環境・社会に与えるインパクトに関する開示を求めている点が、その他の開示基準等とは大きく異なっている。

以上、参考になれば幸いです。

アーカイブ