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フィスコ統合報告書レポート

Vol.7

パッシブ運用でのESG投資における課題

国連責任投資原則(PRI)は本年8月、パッシブ運用でのESG投資における課題に関するディスカッションペーパーを公表(PDFダウンロード :English)。 機関投資家やサービスプロバイダーからの意見募集を行っています。過去10年、パッシブ運用のシェアが高まりを見せる中、パッシブ運用でESG投資をどのように実行するかは、資産運用において主要テーマになっています。

同ペーパーでは、まずパッシブ運用が増えている背景として、アクティブ運用に対する比較優位性や運用コストの低さ、ETF(上場投資信託)等の新金融商品の登場によるもの、としています。一方社会的責任投資は、ESG投資がリスク調整後リターンを向上させるエビデンスが増えてきたことや、投資戦略に自らの価値観を反映させたいとする欲求、ESGデータが利用しやすくなったことが追い風となっているとしています。このようなトレンドは、ESGインデックスの登場や、パッシブ運用でのESG投資の増加と相まっていて、新興市場におけるパッシブ運用でのESG投資も含めて様々な課題に直面しています。

直近10年では、アクティブ運用に対しパッシブ運用は右肩上がりで成長しており、2019年以降はアクティブ運用額を上回るというBloombergの予測が示されています。実際米国では、ミューチュアルファンド、ETF投資ファンド総額は、20年前のUS$220 Billion から、US$7 Trillion に増大し、S&P500構成銘柄の時価総額の45%に相当する規模になっています。一方モーニングスターは、オープンエンド型パッシブ運用でのESG投資残高は、2008年US$20 Billion から、主に欧州の投資家資金の流入によって、2018年には、PRI署名機関数の増加と相まって、US$100 Billion を超えるに至ったとレポートしています。

PRI署名機関は、責任投資原則1によって、投資分析と投資決定のプロセスに、ESG課題を組み込むこととされていますが、パッシブ運用でのESG投資における、その手法においては、ESGインテグレーション(ベンチマークに対して、二酸化炭素排出量、エネルギーや水の消費量等のESGスコアを増減にして、銘柄の構成比率を変化させる手法)よりも、ESGスクリーニング(特定の業界の株式を投資対象から除外する投資手法)のほうが一般的な手法となっていると報告しています。

一方、パッシブ運用でのESG投資の課題面では、ESG情報の不足、評価機関によるESGスコアのばらつき、国・地域ごとのESG規制や開示ガイドラインの違いによる比較困難性、ポジティブなESG情報に偏りがちな傾向、ESG情報取得にかかるコスト増、時価総額加重平均型株価指数に比べたESGインデックス構成手法の煩雑さ、等を挙げています。

以上、参考になれば幸いです。

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