アートや骨董品/美術品を相続するには?鑑定や相続税・リスクについて解説

アート相続
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「アートを所有しており、相続が発生したときに相続人に迷惑をかけたくない」「アートの相続を受けるけど、税金がかかるのかわからない」

美術品や骨董品などのアートの相続に関して、どうすればいいのかわからないという方もいるのではないでしょうか。

そこで、この記事ではアートの相続について、次の内容を解説します。

この記事でわかること
  • アートを相続した際にかかる相続税とは
  • アートとは知らずに相続してしまったときのリスク
  • 特定美術品を相続する場合の税制上の優遇
  • アートを相続して高額な税金がかかった場合の対処法
  • アートを相続する際に相続人がリスクを背負わないための方法

アートの相続人だけでなく、アートを所有している方にも役立つ内容になっているので、ぜひ参考にしてください。

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目次

相続税とは?

美術品や骨董品などのアートを相続する際は、個人に相続税が課せられます。

まずは相続税とは何かを解説します。

相続税の概要

相続税とは、被相続人から受け取った預貯金や土地、アートなどの財産に課せられる税金のことです。

相続税の申告は、被相続人が死亡して相続の発生を知った日の翌日から10カ月以内におこなわなければいけません。

申告書は、被相続人が居住している住所を所管する税務署に提出します。

相続税には基礎控除がある

相続税には基礎控除があり、相続人が残した財産の合計額が基礎控除以下なら相続税がかかりません。

基礎控除の計算式は次の通りです。

3,000万円+600万円×法定相続人の数

例えば、夫が死亡し、相続人が妻と子供2人の場合の計算方法は次の通りです。

3,000万円+600万円×法定相続人3人=4,800万円

この場合、夫が残した預貯金、土地、家屋、アートなどのすべての財産が4,800万円を超えない場合は相続税がかかりません。

参考:相続税(国税庁)

アートや骨董品を相続する際の税金

骨董品や美術品などのアートを相続する際は、相続税についてどのように考えればいいのでしょうか?

アートは、預貯金や土地、家屋、上場株式などと同じように相続財産に含まれ、相続税の対象になります

相続税額の計算は時価で評価し、評価額を税務署に提出する必要があります。

アートの時価によっては相続税のかかり方が異なり、次のように税金が課せられます。

  • アートの時価が5万円以下:家庭用財産として申告する
  • アートの時価が5万円以上:一点ずつ申告する

アートの時価が5万円以下の場合、一世帯ごとに「家財一式20万円」のように全体的に評価されます。

5万円以上のアートは相続税の申告方法が異なるので、気を付けましょう。

参考:第1節 一般動産(国税庁)

アートや骨董品の相続の現状

美術品や骨董品などのアートを相続する際は、何に注意をしなければいけないのか、また相続税の申告をしていない場合はどのようなリスクがあるのかを把握しておかなければいけません。

アートを相続するときに知っておきたい注意点やリスクを解説します。

相続税は時価で計算される

美術品や骨董品などのアートは、相続の際に時価を把握して申告する必要があります。

土地の場合は路線価や倍率方式、家屋の場合は固定資産税評価額などによって時価を判断できますが、美術品や骨董品などのアートの場合は時価を算定するための明確な基準がありません

そのため、時価の評価が難しいという側面があります。

アートの評価について、憲法でどのように規定されているか見てみましょう。

美術品、宝石、ブランド品、その他これに類する動産について、その真贋鑑定を行い、鑑定書又はそれに類する証明書等を付すことでその価値が高まると認められる場合は、鑑定人等に鑑定を依頼するものとし、また、見積価額が比較的低額と認められる財産で、適当な取引事例があり評価可能と認められるときは、精通者意見等を参考にするなど、合理的かつ簡易な方法で評価して差し支えない。
 なお、美術品等の評価に当たっては、その種別、作者別、年代別等による市場価格又は類似品の取引における価格を参考として評価すること。

引用:第5章 第3節 美術品等の評価(国税庁)

つまり、高額なアートは、鑑定士に依頼し評価鑑定書を発行してもらう必要があり、比較的価格が安価と判断できるものに関しては、売買実例方式で時価を出してもいいということです。

安価なアートの時価の算定は売買実例方式以外にも、リサイクルショップの買取査定価格も参考になるでしょう。

また、時価を算定する際にはアートの購入価格が参考になることもあるので、購入時の領収証やレシートなども用意できればよりいいでしょう。

始めから高額だとわかるアートだと迷わずに鑑定に出せられますが、価値が全くわからない場合は、わざわざ鑑定料を払ってまで鑑定士に見てもらうか迷う場合もあるかもしれません。

しかし、相続税の申告期間を過ぎてから価額が判明した際のリスクを考えると、鑑定料を支払う価値はあるといえるでしょう。

鑑定するか迷う場合は、鑑定士に評価してもらうと良いでしょう

高額なアートとは知らずに、相続時に時価を申告しない場合は、未申告の分に高い税率が課せられてしまうリスクもあるので、漏れなく鑑定に出し時価を申告することが重要です。

脱税のリスク?所有者が評価額を明確にしておくことが大切

相続税の申告期間を過ぎてからアートの価値が判明し、アートに対する相続税が未払だった場合、後から高い税率がかかる可能性があります。

相続税が未納の場合のリスクを解説します。

重加算税

重加算税とは、財産を隠ぺいするためにわざと財産を隠したと判断された場合、適用になる可能性がある税金です。

重加算税の税率は次の通りです。

重加算税の税率
  • 過少申告加算税と不納付加算税に代えて35%
  • 無申告加算税に代えて40%

参考:加算税の概要(国税庁)

たとえば、10万円・50万円・100万円の悪質な未納があったと判断された場合の税額は次の通りです。

悪質に未納と判断されたものに対しての税額過少申告税に代わる重加算税無申告に代わる重加算税
10万円35,000円40,000円
50万円175,000円200,000円
100万円350,000円400,000円

また、正当な理由があって未納があったと判断された場合は、税率が低くなる可能性があります。

過少申告税

悪質な過少申告や無申告ではなく、正当な理由があって申告した税額が不足していた場合には過少申告税がかかります。

過少申告税の税率は次の通りです。

  • 税務調査前に自主的に申告した場合:過少申告税はかからない
  • 税務調査実施通地後に自主的に追納分を申告した場合:追納税額の5%(※10%)
  • 税務調査後に不足を申告した場合:追納税額の10%(※15%)

※追納額が申告済みの税金額または50万円のいずれか多いほうの金額を超える範囲に適用される税率

出典:No.2026 確定申告を間違えたとき(国税庁)

税務調査に関係なく申告した場合と、税務調査が入ることが事前にわかっていて追加分を申告した場合、税務調査後に申告した場合では、追加で支払う税率が異なります。

たとえば、申告済みの相続税が40万円で、追加で20万円・50万円・100万円の税額を支払う場合を確認してみましょう。

追納金額税務調査前に申告した延滞税(税務調査の通知なし)税務調査通実施通知後に申告した場合の延滞税税務調査前に申告した場合の延滞税
20万円なし10,000円20,000円
50万円なし25,000円50,000円
100万円なし75,000円125,000円

アートを相続した場合は税務署ではなく、相続人が時価を把握して申告する必要があります。

アートに価値があるとは知らなかったとしても、悪質に財産を隠していたと判断されてしまう可能性もあるので、リスクを背負わないために、相続財産にアートがある場合は、価値を鑑定してもらい、しっかりと申告しましょう。

特定美術品を相続する場合は税制上の制度がある

特定部美品を相続する場合は、税制上の優遇が受けられることがあります。

特定美術品とは:重要文化財として指定された絵画や彫刻などまた、登録有形文化財のうち世界的に価値があるものをいいます。

重要文化財:文部科学大臣が指定した文化財のうち、特に優れたもの
登録有形文化財:所有者が自ら申請すると登録される文化財のこと

特定美術品を寄託契約を結んだ美術館に寄託した場合、アートにかかる相続税の80%が猶予されます。

寄託とは、アートの所有者は変えずに美術館に保管できるという意味です。

アートを寄託した相続人が死亡した場合は、猶予されている特定美術品にかかる相続時は免除されるということも把握しておきましょう。

参考:特定の美術品についての相続税の納税猶予及び免除のあらまし(国税庁)

また、登録美術品は相続の際に物納することが可能です。

物納とは、相続税の金銭に代わる納税方法のことです。

相続税は金銭で納付するのが原則ですが、支払いが困難な方は、条件を満たす場合に相続財産で相続税を支払うことができます。

物納で支払えるものの順位は、通常下記のようになっています。

1順位 不動産 国債 上場株式など
2順位 非上場株式など
3順位 動産

参考:No.4214 相続税の物納(国税庁)

不動産や国債などが優先的に物納として支払われますが、特定美術品は1順位の不動産や国際、上場株式などと同じ順位で物納が可能です

アートは物納も可能ということを把握しておくだけでも、相続が発生したときの選択肢が増えるでしょう。

あわせて読みたい

アートや骨董品の相続税の相場

骨董品や美術品などのアートは、ものによって、また鑑定する側によって評価額が異なります

こちらの口コミでは、絵画が数十万円と鑑定されたようです。

鑑定をおこなうテレビ番組でも、漫画本や絵画にかなりの高額の鑑定が出ているようです。

大切なのは、納得のいかない査定結果が出た場合は、複数の鑑定士に鑑定してもらうことです。

想定していないような高額で鑑定されてしまった場合、その金額で相続税が課せられてしまいます。

あまりにも高額で相続税が支払えない場合は、複数の鑑定士に鑑定してもらうと良いでしょう。

鑑定を依頼する際は鑑定料が気になりますが、美術品や骨董品の買取販売業者の中には、無料で鑑定をおこなっている場合もあるので、無料で鑑定をおこなっているか、まずは問い合わせてみましょう。

アートや骨董品の相続の今後

アートの相続が発生する前に、所有者が事前に相続の際はアートをどのように対処すべきかを決めて行動しておけば、相続人が思わぬリスクを背負う心配がなくなります。

また、万が一払えないくらい高額な相続税が課せられるアートを相続した場合にも、対応しておけば安心でしょう。

高額な相続税が課せられるアートを相続してしまった場合の対処方法や、今後相続が起きる前にできる相続税の対応策を紹介します。

高額なアートを相続してしまった場合は寄贈という選択肢も

相続したアートに払えないほどの高額な相続税がかかる場合は、国や地方公共団体に寄贈することが可能です。

寄贈した場合は相続税がかかりません

相続したアートの時価が高額で、相続税が払えない場合は寄贈という選択もあります

ただし、寄贈した場合は所有権が寄贈先になります。場合によっては相続してから売却したほうがいい場合もあるので、状況に応じて対応するのがいいでしょう。

相続人にとって不要なアートは、相続が発生する前に高額だとわかっている場合、早めに売却を検討したほうが相続税がかかる前に対応できます。

相続税に関しては、早めの準備に越したことはありません。

アートを所有している場合は鑑定に出し、相続前からの早めの対応を

アートは、相続が発生してからではなく、アートの所有者は早めに対応しておくことで、相続人にかかるリスクを減らせます。

また、場合によっては相続よりも贈与のほうが節税しながらアートを次の世代に渡すことができます。

贈与税の年間控除額は110万円です。

この控除額を活用して、110万円以内の範囲内で毎年少しずつ贈与していくという方法を取れば、節税になることがあります。

ただし贈与の際は注意点もあり、相続開始前3年以内の贈与に対しても相続税が課せられるという点には注意をしておきましょう。

アートを今後どうするか早めに決めて対応しておけば、相続が発生する前に贈与や売却など、色々な選択肢が生まれます。

アートは所有者にとっては価値のあるものかもしれませんが、相続人からしてみれば不要なものかもしれません。

そのため、相続人としっかりと相談をして、早めにどうするか決めておくのがいいでしょう。

アートの価格や取得先、時期を記録しておく

アートを取得する際は、購入金額だけでなく取得先や時期も把握しておくようにしましょう。

アートの価値は鑑定士によってばらつきがあるよう、判断しにくいという現状があります。

そのため、アートの取得価格や購入時期、購入先を記録しておくと、価額の算定に役立つかもしれません

アートの所有者は、できるだけ領収書やレシートを残しておき、取得先や取得時期を記録しておけば、相続の際に相続人の負担軽減につながるかもしれません。

そのため、アートを所有する際は、領収書やレシートを保管しておくのがいいでしょう。

相続の税制は今後改正される可能性はあるか

被相続人が残した遺産に、美術品や骨董品などのアートがあることを知らずに相続税の申告期限を過ぎてしまうリスクは、多くの人にあるのではないでしょうか。

相続財産のアートの時価が未申告だったことが判明すると、悪質だと判断された場合は重加算税、正当な理由があると判断された場合は過少申告税が課せられることは免れません。

「価値があるものとは知らなかった」とはいえ、現状では相続税の未申告はリスクが伴います

最近は人々のアートへの関心が高まっており、一昔前よりも美術館に足を運ぶ人が多くなっています。

このような背景の中、アートをより身近なものにするためにも、アートの相続に関しての税制が改正されることを期待します。

アートや美術品を相続するには

最後に、アートを相続するための簡単な手順をまとめておきます。

アートを相続する際の手順
  1. 相続財産にアートがあるか確認する
  2. アートの時価を把握する
  3. 相続税の申告をする

アートを相続するには、まずはアートがあるかどうかの判断から始まります。

アートは安価なものと高額なものでは、時価の査定方法や相続税の申告方法が異なるので、注意が必要です。

できれば、アートの所有者が生きているうちに、アートがどれなのか、また相続・贈与・売却のどの対応を選択するのかを、決めておくとスムーズかもしれません

相続してからのリスクや負担を減らすための鍵は、事前の準備といえるでしょう。

アートや骨董品の相続まとめ

美術品や骨董品などのアートは、価値のあるものだと知らずにうっかり相続税の申告をしていなかったなんてことになりかねません

想定外の税率が課せられる前に、アートの時価を把握して、漏れがないように申告しましょう。

アートの所有者が生きているうちに早めに対応しておけば、相続の際にスムーズに対応できるかもしれません。

相続税の申告漏れによるリスクを背負わないためには、まずは鑑定に出したり売買事例を参考にしたりして、時価を把握するところから始めましょう

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この記事を書いた人

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